2010年12月11日

読書ノート、ふたたび。なかにし礼「長崎ぶらぶら節」


■タイトル:「長崎ぶらぶら節」(新潮文庫)
■著者:なかにし礼
■ISBN:9784101154244
■読書期間:2010/6/27〜2010/7/3
■抜書き:七 より

「お雪チ、おうちは本当に綺麗かよ」

 目の前で踊るお雪にそう声をかけると、お雪は流し目で愛
八を見て、にっと笑った。
 お雪、このちらりと人を盗み見る目、人の気を引いてお
いてそれをはぐらかす狡猾そうな笑み、あどけなさの陰にき
らりと光るしたたかさ、美しい少女特有のわがままや傲慢さ
など、愛八はお雪の未だ隠された部分を冷静に見抜いている
つもりではいた。
 が、そんな冷静さは、お雪の憂いにみちた目でじっと見つ
められるとすぐに消しとんだ。
 
 お雪が美しいがゆえに愛八はそこに少女時代の自分を見る。
自分が美しくなかったがゆえに美しいお雪に自分を見る。
 幼い日の自分というものはなぜかえもいわれず美しい。
不幸が不似合いなくらいに美しい。なのに不幸だという矛盾。
その矛盾に苦しんだ記憶。
 それをお雪を見ると思い出す。

 丸山の街角で初めてお雪を見た時から、愛八は心落ち着か
なくなったが、その理由は、お雪のかかえる矛盾と愛八がか
つて悩んだ矛盾が重なったからだ。


■抜書き:九 より

「ご老人、今日から早速始めようではありませんか」
「なんばしろといいなっとですか」
「あなた方が嬉しいにつけ悲しいにつけ、天の神にすがるよ
  うにして歌った歌ば聞かせてほしかとです」

 長老は首を横に振った。

「人様に聞かせるような代物ではありまっせん」
「歌は、それだけを取り出してみると、なにやら軽薄に、特
に他人には見えるものです。初めに言葉ありきというが、 世
界じゅうどこの国においても最初にあった言葉は歌でした。
感激の絶頂においても絶望の奈落の底ででも、死に向かって突
進しておく時にも歌った。歴史の様々な状況の中に歌があった。
しかし、残念なことに状況が変わると、歌は忘れ去られていく。
善頂村にもたくさんの歌があったはずです。その歌は今や忘れ
られようとしている。その歌を歌ってください。歌を思い出せ
ば、歴史がよみがえります。今、ここで古い歌を記録しましょ
う。死にかかっている歌に新しい命を与えてやりましょう」

 長老はもはや反論する言葉を持たなかった。
 長い沈黙が教会をつつんだ。村人たちの息遣いさえ聞こえて
こない。
 

■長い長いワンセンテンス〜若者よ、明日がある

 この本を読み終えたのは平和島競艇場のスタートピットに
一番近いスタンドでだった。
 平和島レディースカップオール女子戦の初日。
 その前々日に知り合いのレーサーと蒲田で飲んで、彼女ら
が参戦するこの一般戦を観戦しに行ったのである。
 2Mを鮮やかに旋回していく三浦永理の姿が印象に残って
いる。初日のメインレースに出場する彼女は、開会式後のメ
インレーサー6人に行なわれたインタビューで「体調が悪く
て」と言っていた。どこがじゃ!と突っ込みたくなるような
素晴らしいターンであった。
 佐々木裕美を置き去りにしていたもの。

 主演:吉永小百合で映画化されたこの作品。
 抜き出した部分にあるように、作中での主人公は決して綺
麗な芸者ではないが、歌の上手い、そして、情のある女性と
して描かれている。
 なんで小百合さんで?と思う読者は多数であっただろう。
(ま、それは商業映画であるゆえ・・)イメージとしては、泉
ピン子が最適だったりするもんね。
 うろ覚えなのだが、たしか解説にもピン子の名前が挙がっ
ていたような。

 自伝小説ともいえるデビュー作「兄弟」で才能を見せつけ
た なかにし礼。しかし、実在の人物に材を取ったこの作品
も実に巧みで面白かった。
 次は「テルテル坊主の照子さん」あたりを手に取ることに
なるのだろうな。

 私が応援しているレーサーは、期変わり初日となるこの日、
堂々の女性勝率No.1レーサーとして登場した。
 その緒戦、あろうことかフライングを切ってしまい、スタ
ンドでそのシーンを見ていた私は悶絶してしまった。
 直後、前々日に一緒に飲んだOさん(この土曜日は仕事中)
や静岡に住むオヤジに電話をかけたのは、少しでも己のショ
ックを紛らわそうとしたからだろう。
 しかし、レーサーの精神力は並ではなく、メインレースで
はスタートを加減したものの、1Mの旋回力でキッチリ2着
を確保して好配当を提供した。
 無論、私は彼女からの舟券を買っていたのだが、相手を間
違えてしまい、再びスタンドで悶絶していた。あの2連単、
取った人にとっては実に美味しい30倍弱であったことだろ
う。

 悶絶していたのは何も私だけではない。
 水面に最も近い金網の手前で、へたり込んでいる若者がい
た。スタンドの中団にいた私が気づくぐらい、ばたっと体を
崩したのだ。
 そんなに(誰に?)突っ込んでしまったのだろう?
 
 フライングをしたレーサーは買いにくく、2着にきた**
*さんを自信をもって切ったのかな。
 とすると、テラッチとヨコチンにドカンと?あるいは平和
島苦手と***さんに名指しされていたテラッチも切って、
抜群のアシを見せた三浦永理を厚く・・・
 私が色々と想像している間、若者はまだそのままだ。
心配した彼女が若者の肩に手をかける。
 あ、初心者の彼女にいいところ見せようと・・・。
 全てのレースが終わったのでファンは、勝った人も負けた
人も家路を急ぐ。テンカウントはすでに数えられたのに、若
者はなおも立ち上がれない。
 勢い?私もスタンドのベンチから腰をあげられない。
 まばらになった競艇場。場内警備のおじさんが近づき、彼
に声をかける。若者は何か答え、やっと立ち上がった。空元
気ぽくスクっと。
 いや、そう見えたのは、私が延々と勝手な想像をしていた
からかな。

 翌日、Oさんと2人で平和島の指定席で観戦した。
 Oさんの奥さんも***さんもいいところがなかったけれ
ど、知り合いのレーサーが目の前の水面を疾走する姿を応援
するのは実にいいものだな、と改めて思った。
 最終のメインレース、横西奏恵と鎌倉涼のウラオモテから
3着宮本紀美に流した3連単が思いのほかついて、少しはこ
こ2日間の外れ舟券の溜飲を下げることが出来た。
 だから、Oさんと気持ちよく平和島駅周辺で3軒ハシゴし
た。その分、翌日は辛かったのだけど。

 あの若者は、日曜日にも平和島に来たのかな?
 ギャンブルはいい時もあれば悪い時もある。長く付き合う
には、身の丈にあった勝負を、あるいは負けを織り込んでお
くことだ。(その分、大勝もできないけどね)
 今も彼が競艇と付き合ってくれているといいなと思う。


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読書ノート、ふたたび。: http://onlykiwi.seesaa.net/

読んだ本の題名と作者、それから読んでいた期間と出版元。
 このたった4つの情報を記しただけの簡単なメモ的なもの
が、ボクがかつて付けていた「読書ノート」の全容だ。

 いつの頃からか、せっかくの読書ノートをつけるのをやめ
てしまった。
 本を読むたびに、ああ、なんて思うこともあり、じゃあと
いう訳でふたたびつけだそうと思いたった。

 できれば、その読書ノートをつけることを勧めてくれた
きみこ先生に読んでもらいたくもある。

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*読書ノートの索引はこちら

  http://onlykiwi.seesaa.net/category/6437306-3.html


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