2010年11月20日

読書ノート、ふたたび。松本清張「張込み」


■タイトル:「張込み 松本清張短編全集 3」(カッパ・ノベルス)
■著者:松本清張
■ISBN:4334074820
■読書期間:2010/6/7〜2010/6/13
■抜書き:父系の指 より

 私が三つの時、一家は広島からS市に移った。海峡をへだ
てて九州の山々がすぐ眼の前に見えた。

 (中略)

 父は相場に当たりつづけた。米相場といっても、父などが
やっているのは、そのほうの術語で"ガス"という空米相場の
ことで一種の賭博であった。
 米相場は一日一日の天候が鋭敏に影響する。それで米の相
場師はたいてい天気を見ることがうまかったが、父も天気の
ことはだいぶん研究していて、日がかんかん照っているとき
でも、ああ今晩は雨だな、と言うとたいていそのとおりにな
った。
 それも父の自慢の一つで、晴れあがった朝に、午後から雨
が降るぞと予言しておいて果たして雨になると、どうじゃ、
うまいものじゃろう、と相好をくずしてよろこんだ。

 相場に当りつづけているころは、父は自分の居間にしてい
る二階の六畳の間に、新しく買った大きな机を置き、そのこ
ろ流行りだした青い羅紗をかけ、硯箱、インキ壺、ペン皿、
印肉、スタンプ台、帳簿立てなどをならべてうれしそうにし
ていた。
 それは父がよく行く仲買店の帳場を真似たものらしいが。
 もとより帳簿一冊の必要はないはずだから、たんにそんな
事務用具を飾りたてているだけで、気分を味わって満足して
いた。
  
 こうしたことや、花街に女ができたことや一流の料理屋に
出入りすることは、父の観念からすれば一種の出世であった。

 私は父から花街の用語をよく聞いた。
 たとえば、醤油はムラサキと呼ぶこと、塩はナミノハナと
いうこと、梨はアリノミと呼ぶことなどであった。
 父は九つぐらいの私にそんなことを教えて得意になってい
た。
 そのころが父の得意の絶頂であったようだ。
 母がいないときを見すまして、ひとりでへたな節で「カッ
ポレ」や「瓜やなすび」を唄った。
 私は「明日はダンナの稲刈りで」という文句を覚えてしま
った。父はそれらの唄をユキという女から仕込まれたのであ
った。


■長い長いワンセンテンス〜下関、日和山公園

 清張先生はS市と書いているが、前後の文章を読めば、
それは下関のことだとすぐ分かるようになっている。
 下関の旧花街がどの辺りにあったのか私は知らないが、
日和山公園に行く道すがらに飲み屋街があったことは覚え
ている。

 私は歴史上の人物では高杉晋作が好きで、何回か下関を
訪れたことがるのだ。
 日和山公園は関門海峡を望める丘の上にあり、そこには
晋作さんの銅像があるのである。
 夜になると、晋作さん像がライトアップされる。

 抜き出し箇所を読みながら、私は以前訪れた下関を思い
出していた。

 初めて訪れた学生の時は、公園からの帰り道、どこかの
定食屋でカツ丼を食べたな。
 2回目の時は博多から川棚温泉への出張の空き時間を利
用して公園に行ったのだ。
 3回目は夜。だから、晋作さんがライトアップされてい
ることを知った。暗かったから、公園への登り口を上手く
見つけられず、また、登りながらこれでいいのか?と迷っ
たりした。

 今、思うに、そんな迷う道だったのかなぁ、と。
 あ、下関駅前で飲んで、酔っ払ってたからかな?

 私が3回目の日和山公園を訪れてから半年後、駅舎が放
火によって焼け落ちてしまった。
 趣きのあるいい駅舎だっただけに残念に思ったものであ
る。

 3年前の夏、下関を訪れたのだが、その時は車で行った
ため、日和山公園にも、下関駅にも寄らなかった。
 今度訪れる時は、下関駅で降りて、てくてくと日和山公
園に向かいたいものだ。


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読書ノート、ふたたび。: http://onlykiwi.seesaa.net/

読んだ本の題名と作者、それから読んでいた期間と出版元。
 このたった4つの情報を記しただけの簡単なメモ的なもの
が、ボクがかつて付けていた「読書ノート」の全容だ。

 いつの頃からか、せっかくの読書ノートをつけるのをやめ
てしまった。
 本を読むたびに、ああ、なんて思うこともあり、じゃあと
いう訳でふたたびつけだそうと思いたった。

 できれば、その読書ノートをつけることを勧めてくれた
きみこ先生に読んでもらいたくもある。

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*読書ノートの索引はこちら

  http://onlykiwi.seesaa.net/category/6437306-3.html


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