2010年02月28日

読書ノート、ふたたび。佐藤多佳子「黄色い目の魚」

■タイトル:「黄色い目の魚」(新潮文庫)
■著者:佐藤多佳子
■ISBN:4101237343
■読書期間:2010/2/1〜2010/2/8
■抜書き:からっぽのバスタブ より

 ぜんぜん忘れてた。そんなの忘れてた。
 自分でも忘れているようなヘンなことばっかり通ちゃんは
どうして覚えているんだろう。

『Mのこと』は、人気絶頂だった『サンカク』の連載を急に
やめてから描き始め、一年に四作、三十枚くらいの超スロー
ペースで続けている。
 最初は、自分が出てくる漫画ってけっこうイヤだった。
 いくら抗議しても通ちゃんはニヤニヤ笑ってたけど。
 今でも、読むのはちょっと勇気がいる。恥ずかしい。

 あんなふうに須貝さんとケンカみたいになって、口をきかな
いまま学校を出て、通ちゃんチに行って、リビングのテーブル
に置きっぱなしの雑誌を手にすると、いつもよりもっと読むの
が怖かった。おそるおそるページを開く。

 何回も読んだ。気がついたら、じわじわと泣いていた。
 なんで涙出るの?イヤだ。

 銀色のステンレスのバスタブは、通ちゃんの前のマンション
にあったものだ。
 そこによくもぐりこんでいたのは、十一歳の時だけじゃなく、
十歳の時も、十三歳の時も・・・。

 夏でも冷たいひんやりしたあの感触!

 息が苦しくなるから、折りたたみ式のふたは少しだけ開けて
あった。それでもふたのビニールのにおいは強烈だった。
 それと、石鹸とシャンプーと水のにおい。
 その天窓から通ちゃんがたまにのぞきこんで、また入ってん
のか?とあきれて笑った。

 バスタブの上の窓は西向きで、午後はすりガラスが黄金のよ
うにまぶしく、夕方には紅や紫や不思議な桃色に染まった。
 あの午後はなんて長かったんだろう。どこにもつながらない、
まるで永遠のような時間だった。
 

■長い長いワンセンテンス〜再読、やはりいいものである

 この小説を読むのは2回目である。

 そもそも最初に読もうと思ったのは、角田光代さんのエッセ
イの中で"お薦めの本"のリストに載っていたからだった。
 誰々が"面白い"と言っている(書いている)から読んでみよう
という発想は私にとって珍しいケースなのだが、この頃(05年)
読む作家の幅を広げたいと思っており、図書館の書棚から"ピン
!"ときた本を抜き出す原始的な方法の他も模索したかったのだ
ろう。
「黄色い目の魚」が面白かった、という記憶はあったのだが、
具体的にどこがという覚えがなく、書棚にそのタイトルを見つ
けて、再び手に取ったという次第だった。

 書き出しの『テッセイに会うことになった』というセンテン
スに、"ああ、そうだ。こんな始まりだった"と思い出したのだ
が、じゃ、このテッセイと少年はどうなっていくのか、書かれ
ているエピソードを読んでいくと"あった、あった"と頷くのだ
が、記憶がストーリーを先回りできない。
 軽いジレンマを感じながら、もう一方の主人公が登場する頃、
いつしかストーリーに引き込まれ、そんな感覚を忘れていった。

 非常に面白い青春小説である。
 淡々と描かれる学校の日常、ありそうな、それでいて、よく
できている悩み、こころの葛藤。
 オレももう少し悩めばよかったなどと思ったが、忘れてしま
っただけで"ありがちな"悩みは抱えていたのだろう。
 あの頃書いていた日記を読み返せば・・かもしないが、もう
何年も前に処分してしまった。
 いづれにせよ、あの世代の3年間は振り返ってみると、あっ
という間である。
 今を生きている方はその時間を大切にして欲しいと思う。

 私は青春小説が好きなのであるが、今回再読することによっ
て、このジャンルの指折りの一冊となったように思う。
 余談だが、この時同時に借りたもう一冊の本も青春ものであ
った。(意図したわけではない)


 抜き出した箇所。
 子供の頃、私もバスタブで遊んだものだ。たとえば。

 湯船に浸かりながら、徳利に入れた牛乳をお猪口で飲んだり
(ユキミザケ気分)、桶に入っている握り寿司を食べたり、あろ
うことかラーメンをすすったりもした。
 なんでそんなことをしようと思ったのかは思い出せない。
 ユキミ牛乳ザケが気にいって、それが変な方向にエスカレー
トしたのだろう。多分。

 文庫本の解説を書いていたのが、他ならぬ角田光代さんで
あった。
 私は、冒頭にも書いたが、角田さんに薦められてこの本を
読んだだけに、彼女の名前を見て"ふふ"と微笑んでしまった。
 多分、前回も同じリアクションをしたのだろう。

 ところで、作者の佐藤多佳子さん。
 ちょっと前にテレビドラマ化された「一瞬の風になれ」を
書いているようだ。
 そんなの知らなかったの?と言われそうだが、私は今回初
めて「黄色い目の魚」と同じ作家が、後に著した作品という
ことで線が繋がった。
 元陸上部としては興味ある作品だったが、それだけに読ん
で"がっかり"したくないという考えが浮かんだりして、未読
なのであった。
 機会が訪れた時に、躊躇わずに手に取ることが出来そうだ。


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読書ノート、ふたたび。: http://onlykiwi.seesaa.net/

読んだ本の題名と作者、それから読んでいた期間と出版元。
 このたった4つの情報を記しただけの簡単なメモ的なもの
が、ボクがかつて付けていた「読書ノート」の全容だ。

 いつの頃からか、せっかくの読書ノートをつけるのをやめ
てしまった。
 本を読むたびに、ああ、なんて思うこともあり、じゃあと
いう訳でふたたびつけだそうと思いたった。

 できれば、その読書ノートをつけることを勧めてくれた
きみこ先生に読んでもらいたくもある。

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posted by onlykiwi at 10:30| 東京 ☔| Comment(1) | TrackBack(0) | 読書ノート、ふたたび | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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